私は同じ映画を何度も見るのが苦手で、いくら好きな木村君の映画といえども何度も見ているとつらくなる
でもこの映画は何度見ても、終わったとたんに又殿と姫に会いたくなるのだ。
文字通り、見たくなるのではなく会いたくなる。
映画館に行けば会える!それがうれしくて何度も通ううちに6度目になった。
不思議なことに回を重ねるごとに、ちょっとしたシーンで涙が出てしまう。
シカを追って崖から落ちた殿を助けた、あのシーン。何だか泣けて仕方がなかった。
海の向こうらに行ってみたい。
のちの運命を知っているからなおさら、一瞬見せた帰蝶の素直な心が刺さった。
時代も、境遇も過酷な運命の元に生まれた二人。その運命を当然のこととして受け入れて生きてきた二人に、海の向こうの違う人生という夢が生まれた瞬間。
あの帰蝶の表情は、本当に美しかった。
帰蝶によって呼び覚まされた、信長の、違う人生という夢は、同時に帰蝶への思いも動かしたのかなと思った
帰蝶はある意味道三そのもの。父の野望を自分の野望として疑うこともなく生きてきた人なのだと思う。
そのために信長を利用していると自分でも思い込んでいただろう。
利用しているはずの信長に、いつしか心惹かれていくさまがなんとも切なくて、ふと見せるやさしい表情に涙が出てしまう。
かえるの香炉を手にした時のうれしそうな顔は、すでに父の野望を果たす者ではなく、愛する人と同じ夢を見る女性の顔になっていた。
お互い自分の気持ちには気が付いても、相手にそれを伝えられない不器用な二人。
相手に気持ちを伝えられないままに、自分の行き先に帰蝶との違う人生を夢見て修羅の道を突っ走る信長は、どんな気持ちだったんだろう。
帰蝶も、自分が導いてしまった修羅の道を突っ走る信長をどんな気持ちで見ていたんだろう
おぬしが言ったんだ、という言葉はきっと二人の心をえぐったに違いない。
大友監督のインタビューや、メイキング動画を見るとまだまだこの映画は見所が満載。
太秦の職人技も堪能したいし、エキストラの一人ひとりまで、本物の兵士にしか見えないこの映画の本気さを、満足するまで見たいなと思う。
幸い私が行った日も上映回数は減ったものの、会場も大きく入場者数も多く、まだまだ会いに行けそうだ。