最上

野放しにされる悪を許せなかった最上。
それはとても分かりやすい感情で、見ている側にも共感されやすい。
だから、原作のラストを変えなかったら、いったい正義とはという問いを抱えたままではあっても、そこで納得して見終えたと思う。

監督は、インパールのエピソードを付け加え、丹野を政治の闇を告発する人物に変えることによって、自身のメッセージを込めた。
そのことによって、いったい正義とは?というとてもシンプルなテーマがぼやけてしまったようにも感じた。

インパール作戦が、権力の暴走であったなら、最上の行動も権力の暴走といえる。
最上は、一方で裁かれない悪を憎む人物でもあり、一方で権力を使って暴走する人物でもある。

別荘の庭に埋まっている白骨とインパールの白骨は、同じく権力によってないがしろにされた人のものだ。

丹野のために何ができる?と問う最上に、何もできない、お前は体制側の人間だからと言った丹野のセリフが、一番本質を語っていたように思った。

とても矛盾をはらんだ最上という人物。
それでも、魅入られてしまうのは、木村拓哉という人の持つ強烈な引力のせいだと思った。

最上をこれほど魅力的に描いたのは、監督の意図なんだろうか
この最上をどうとらえたらいいのか、毎回もやもやとした気持ちが残ってしまう。