正義とは?

正義とは?という問いかけの答えは最初から出ている。
それでも、感情的には、正義でないものを認めたくなるのが人の気持ちかもしれない


最上の正義はごく個人のもので、それがまかり通ってしまえば、人が長い時を費やして築いてきた秩序ある社会を否定することにもなる。
人は長い時間をかけて、富や権力のないものも同じルールの中で生きられる仕組みを作ってきたのだから。
そういうことを考えると、この映画は、権力を持ったものが理性を失い、暴走するこわさを考える映画なんじゃないだろうかと思う。

検事というとても大きな権限を持つ人が私情に走ってしまったら、人、一人を抹殺し、取り繕うこともできてしまう。
最上の中にインパール作戦を強行した軍部と同じ、大義のためには個人は犠牲になっても仕方がないという感覚を感じてしまう
理不尽な権力に対する怒りをルーツにもつ最上と諏訪部が、その権力と全く違うようでいて同じ思考を持つのは、皮肉なことだと思った。 

やはり、どんなに歯がゆくても遠回りに見えても、人が長年英知を傾けて築いてきたもの(法)に従わなければいけない
正義のために個人の命さえ抹していいとかんがえるのは、国家の正義のために多くの人が失われてもかまわないという理屈と変わらないのだと思う
世の中がきな臭い今、ちょっと落ち着いて理性を取り戻して、自分の頭で考えようというメッセージにも見える

そういう矛盾や闇を抱えたまま生き延びた最上という人物は、事の良しあしにかかわらず、とても魅力的に描かれていて、監督が木村君に合わせて原作を変えたというのはこういうところなのかなと思った
悪に手を染める木村拓哉が魅力的って、なんとなくGIFTのことを思い出してしまった。
あのGIFT以来、木村拓哉という人は悪を封印されてしまったような気がする。
悪をかっこよく表現できてしまう、だからやってはいけないって変な理屈だよね。
年齢を重ね、一時期のブームのような人気が落ち着き、やっとそういう束縛からも解放されつつあるなら、本当にうれしい。